塩谷哲トリオ(Blue Note Tokyo、2008/8/17日2nd)
2ndも開演時にはほぼ満席でした。
整理番号は7番が取れて、ピアノ背後の列の前から3番目で見ました。
●アーティスト:塩谷哲(pf)、井上陽介(b)、山木秀夫(d)
●ソングリスト
1.Deep Affection
2.Flying Shoes
3.いっそセレナーデ
4.88+∞
5.Mingle Jingle
6.Spanish Waltz
アンコール
7.あこがれのリオデジャネイロ
・Deep Affection
ピアノのみで始まってスローに即興が進みます。
オルゴールを開けたような感覚もありつつ、強く弾かれるパートもあり。
弱くなって終わってから、この曲に入りました。
名古屋の2ndとは曲目が違っています。
それもこの曲は今のトリオの曲です。
1年ぶりにトリオで聴きます。
ピアノソロで聴くときとは趣が異なります。
効果的に入るベースが利いていて「今日はトリオなんだな」と思いました。
展開部は再びピアノのみ。
この曲独特の深い世界に連れて行ってくれます。
きれいな音がたくさん並んで、長く続きます。
続いてベースのソロ。
この曲のベースの音は特に切なくて、世界がより深くなります。
そしてピアノが受け継いで、この曲いちばんの盛り上がりパートへ。
ベースが応える部分があります。
「トリオなんだな」とまた思いました。
ここが特に好きなんです。
細かく言うと、ベースが応えたあとのピアノの入り方、音。
最終部に向けて、再びピアノのみでメロディ。
客席はピーンと張りつめています。
すごく、聴いてます。
伝わってきます。
シンバルとベースが入って、ラストへ。
またピアノのみになって、やさしく終わりました。
・Flying Shoes
やっぱりこの曲になると楽しくなります。
軽やかだけど次第に力強く。
私の好きポイントはCDの通りでした。
ソルトさんっぽい音の運びでたくさんの音、高い音。
客席から拍手が起こってベースのソロへ。
1stでは隠れていたコミカルな面が出ています。
調子が出てきましたよ!陽介さん。
ソルトさんも時折コミカルをなぞって応えたり。
長く続きました。
3人での演奏に戻って徐々に盛り上がり、最終パートに向けて再びピアノメインに。
体を左右に揺するソルトさん。
CDのようにせり上がってきました。
いつもより粘っているような。
そう簡単には終わりません。
最高潮に盛り上がり、ドラムの音もグッと迫ってきてジャーンと終了。
いつも鳴っているに違いないのだけれど、ここぞというときに存在感が半端じゃなくハッとしてしまう山木さんのドラムが特に好きです。
・MC
・いっそセレナーデ
陽介さんのベースのみで始まって、また名古屋2ndのときと曲順が違うようです。
何かを語っているベース。
メロディをつま弾いている右手が突然上に移動して「ピーン」と弦をはじきます。
(左手だったかも。自信ありません。すみません。)
このときのソロはその「ピーン」がアクセントになっていて、効果的に何度も出てきました。
そして「いっそ」のメロディへ。
MCで「いっそソルトルベ」のカクテルの紹介をした後なので、この曲をここに持ってきたのでしょうか。
つながりがわかりやすいですからね~。(勝手な想像ですけど)
2度目のメロディはピアノ。
シンバルも絡みます。
「セレナーデ~♪」のところがたまらなく優しいです。
そして再びベースのソロ。
陽介さんのベースの音をレポートでどう表現すればいいのか、私は自分の表現力のなさに今回ホントに苦しんでいます。(ピアノやドラムについてもそうなのですが)
とつとつと、と言えばいいのか、ソルトさんのピアノの空気感を受け継いで、曲にもマッチしていて、本当に聴かせる演奏です。
続いてピアノ。
「君のことを~」のところからです。
力強さがあって感情の起伏が感じられます。
でも「セレナーデ~♪」のところはやっぱり優しい。
なんか、あらためてですが、すごいピアニストだなあと思います。
最後の「あまい口づけ~♪」のところからはピアノのみ。
ホントににくいアレンジです、ピアノ好きには。
「浮かべて 泣こうか~♪」と弾き終わるとベースのリフ、山木さんのシンバルが加わります。
ピアノも余韻を残しつつ、終わります。
・MC
オリンピックにこじつけ気味?で長くなっているソルトさんのMCに対抗して、山木さんと陽介さんが楽器を離れて舞台袖でじゃんけんを始めました。(いいセンスしてます、お2人)
客席から笑いが。
サイン会のときに聞くと、山木さんが負けたそうです。
・88+∞
ソルトバンドでもほとんど聴くことがなかったこの曲を選曲してもらって、嬉しいです。
モチーフが繰り返されている短い曲で、CDではピアノ(エレピ)に応えていろいろな楽器が出てきます。
シンプルだけどバリエーションがあると言うか、ソルトさんには時々こういう曲があり、私は好きです。
これがトリオの手にかかるとどうなるのか。
ピアノのみで優しく始まります。
やがてベースとドラムが加わります。
そうするとピアノは自由に。
3人とも音が多いです。
でもモチーフの最後は必ず「タタタタン♪」で決まります。
これが聴いていて心地いい。
ベースもソロでモチーフを奏でます。
最後の決めにはピアノも参加。
次第にピアノがクローズアップされ、モチーフが変化してきてどうなるのかな~と聴いているとやがて「Mingle Jingle」のイントロに。
・Mingle Jingle
ブレスがあってソルトさんが手を叩いてメロディに入ります。
ひと通りのメロディの最後では、ピアノもベースもドラムも同じ音を合わせてたくさん素早く弾いて、その後ピアノが低音から高音に流れるようにきらめいて、続く「ババババババーン」で決まります。
この合わせて素早く弾くところ、いつもすごいなあと思います。
さぞ難しいだろうな、と。
ソルトさんは自分で書いてるし、指が動くからいいでしょうけど、要求されたベースは大変だな、と(笑)
なので私はこの時いつもベースに注目しています。(意地悪かな)
陽介さんの指の激しい動きもソルトさんに決して引けを取っていません。
さすがです。
そしてここを通り抜けた陽介さんは、いつも山木さんの方を見て息を吐いて「終わったよ。あ~よかった~」という安堵の顔をするのです。
この顔を見るのが、私の密かな楽しみでした。。
サイン会のとき陽介さんに報告すると「そんなに見ないで(笑)」と言われました。
そこに続いてピアノが展開していきます。
もう、飛び跳ねています。
指の動きに見とれてしまいました。
盛り上がってます。
盛り上がりの後半部に差し掛かってちょっと調子が変わる?ところがあり、私はそこを勝手に「転調するところ」と呼んでいますが、きっと転調はしていません。
自分の音楽的知識のなさが恥ずかしい。。
きっと伝わってませんね。
CDで言うと2分23秒あたりの箇所です。(←そんなことまで書くか!)
何が言いたいかというと、ライブでもそこでゾクッとするんです(笑)
すみません、全く個人的なことで。。
その後もピアノは自由に激しく羽ばたいて、それが落ちると今度はドラムのソロへ。
山木さんも負けていません。
くすぶりつつも、徐々に乱れ打たれるドラム。
山木さんだなあ、と感じます。
ピアノとベースはシンプルなフレーズの繰り返しでそっとサポート。
続いてはベースのソロです。
聴かせるベース。
サポートしているピアノが、ちょっと誘い水を向けます。
するとベースもなんか崩れてきました。
いつの間にか「チョッコレート~♪」のフレーズを弾いているベース。
「チョッコレート~、チョッコレート~、チョコレートは明治~♪」の「チョッコレート~♪」です。
おもしろいメロディは続き、行き着くところまで行ったようで、陽介さん、ハタと気づいて演奏を中断してソルトさんと山木さんを見回しました。
「あれ、オレだけ?」という感じで。
客席にはさっきから笑いがくすぶっています。
再開後も陽介さんは全開。
左右の手は上で弾いていたかと思うと急に下に落ちます。
上に戻ったかと思うとまた下に落ちます。
それが繰り返され、だんだん早くなって、おもしろいフレーズになって。。
陽介さんが「アー」か「フー」か何かを漏らしたと思います。
ソルトさんは立ち上がって笑っています。
楽しませてもらったソロが終わり、3人の演奏に戻ったところで客席から大きな拍手。
メロディがあって、3人同時の素早い箇所がまたあって、安堵した陽介さんは今度はソルトさんを見ました。
最後は熱を冷ますように軽いタッチになって、終了。
見事です。
・MC
・Spanish Waltz
小曽根さんとのデュオのために書かれた曲ですが、ソロでも演奏されますし、トリオのアルバムにも収められています。
それぞれ顔つきが違います。
別の曲のようです。
ピアノのみで始まり、スペインの香りが漂います。
とてもドラマチック。
私は弾けないのでよくわかりませんが、きっととても難しい曲だろうなと思います。
高く低く音が移り変わってリズミックに、そして強弱も加えられ、この曲特有のフラメンコのようなフレーズも時折顔を出しつつ進んでいきます。
それらが全部合わさって、聴き手をこの曲の世界に連れていきます。
エネルギーが一旦発散されてから、メロディへ。
最初はピアノのみ。
2度目からベース・ドラムも加わります。
私の中ではやはりデュオの曲、ソロの曲、つまりピアノの曲というイメージが強いのですが、このベースとドラムでトリオの世界での「Spanish Waltz」が感じられ、いつもハッとします。
パートが区切られて、展開部へ。
1つ1つ独立した章のようで、引き込まれます。
初めはスローで、よく響くベースの音が利いています。
やがて熱気を帯びてきたピアノ、力強く多くの音が響きます。
ドラムも盛り立てます。
弾いていて、それを自分で体感して、どうしても気分が高揚してしまうソルトさん。
そんな感じがします。
それが音に現れて、聴き手にも伝わるのです。
フラメンコフレーズになって、それが最高潮に。
そこで発散され余韻を残しつつ長めのブレス。
たまにここで曲が終わったかと思ったお客さんから拍手が起きることがあります。
「まだ、まだ、まだあるよ」と言いたくなります。
ソルトさんの曲を聴きこんでいるファンが多いブルーノートではあまりありませんが。
(でも、今回も1度あったかな?)
ここで曲調が一変。
ゆっくりとしたピアノ。
大きく包み込まれるように。
1曲の中でこのコントラスト、たまらないです。
そして弓で奏でられるベースが応えます。
この音に艶があって本当に素晴らしい。
うっとりしてしまいそう。
ピアノが優しく応えます。
また弓、またピアノ、また弓、またピアノ・・・。
この一連のところ、好きです。
フェイドアウト気味になって再びピアノがくすぶり出します。
山木さんのシンバルで目を覚まされたかのように。
トリオの曲だなあと感じます。
一気にはじけて最終パートのメロディへ。
抑えられていたものが噴き出すように、ここからの盛り上がりは早いです。
フラメンコフレーズも強く、ドラムの音も耳に飛び込んできます。
陽介さんの手も激しく動いていますが、ドラムとピアノにかき消されているような。
この曲独特のフレーズが力強く繰り返され、終わりがもう近いです。
ピアノが最後を決めるための準備に入りました。
鍵盤の上を手が滑ります。
そして最後の、切れのよい決めフレーズ。
ドラムが「ドドドン♪」と締めて終わりました。
何度聴いてもカッコイイです。
よくこのような曲、書きましたね、ソルトさん!
●アンコール
・MC
見に来られていた著名人(敬称略)
川江美奈子(作曲家)
佐山雅弘
小曽根真
ブルーノートのスタッフからの後からの情報によると、小曽根さんは内緒にしていたようです。
ところがアンコール前に山木さんが楽屋に引き上げるときに小曽根さんを偶然発見。
「小曽根さんが来てるよ」と、楽屋でバレたらしいです。
「言ってくれないんだもん!このセットでしたか~」とソルトさん。
数日前に会ったときには「19日かな?」という話になっていたとのこと。
20日が早朝の4時起きなので、急遽この日になったようです。
「せっかくですから、ねえ!」とステージに上げられた小曽根さん。
山木さんとの挨拶のときには2人でじゃんけんもしていました。
個人的に私はウケました。
「ちょうど次の曲、あれなんですよ」
「あれですか」
「あ、キー変えたんだ」
ソルトさんが少し弾いて「キー違うなあ」
という風なやりとりがあって・・・
・あこがれのリオデジャネイロ
ソルトさんと小曽根さんが連弾。
最初のメロディの途中で左右交替、サビの途中でも交替、再びメロディの途中で交替。
いかにも楽しそうではじけた音。
山木さん、陽介さんも笑っています。
展開部はソルトさんのみで始まりました。
小曽根さんはピアノの横に立ってリズムに乗っています。
入れ替わって今度は小曽根さんのみ。
太い音です。
ソルトさんも参加。
嬉しそう。跳ねています。
山木さんを音で誘ったり、曲調が少し変わったり、小曽根さんが1小節外したり。
いよいよ最終パート。
ソルトさんの音も厚く太く、旋律はソルトさんっぽく。
そこに小曽根さんも入ります。
ソルトさんは立ち上がって弾き出しました。
すごい熱演!
ピアノ×2、ドラム、ベース、それぞれの最高潮の音と客席全体の興奮が相まって、一種異様な盛り上がりで終わりました。
4人がステージから去ってひとしきりの拍手がおさまった後、またどこからかアンコールを求める拍手が。
ダブルアンコールはさすがになく、拍手はフェイドアウトしました。
(21:00開演、22:43終了)
この日のサイン会はいつものB1ではなく、なぜかホールのあるB2で行われました。