塩谷哲デビュー30周年 塩谷哲×東京フィルハーモニー交響楽団(埼玉・RaiBoC Hall 市民会館おおみや 大ホール 2023.7.29)

「塩谷哲デビュー30周年 塩谷哲×東京フィルハーモニー交響楽団」
日時:2023年7月29日(土) 開演16:00 未就学児は入場できません
会場:埼玉・RaiBoC Hall 市民会館おおみや 大ホール
出演:塩谷哲(ピアノ)、東京フィルハーモニー交響楽団、川瀬賢太郎(指揮)
料金:S席 5,000円、A席 4,500円、B席 4,000円 さいたま市民割、友の会料金あり
※ソロデビュー30周年記念公演として開かれます。書き下ろしの新作も演奏予定!
※演奏予定曲目:ガーシュウィン:ラプソディ・イン・ブルー、塩谷哲:スパニッシュ・ワルツ、塩谷哲:EARTH BEAT、塩谷哲:デビュー30周年書き下ろし新作
※SALTさんのインタビューはこちら
お塩ひかえめ先行予約 3/20~31
※発売日:4/22


【演奏曲】
1.凪 -nagi- / アルバム「SALT II」より
2.Earth Beat / アルバム「SALT II」より
3.Life With You / アルバム「SALT」より
4.Rhapsody in Blue / G・ガーシュイン

~休憩20分~

5.Wishing Well / アルバム「Wishing Well」より
6.Pray / アルバム「Wishing Well」より
7.Elegy for Piano and Orchestra / 焼き直し新作
 第1楽章 Darkness,Sadness,Unreasonableness…
 第2楽章 Deep in Thuoght,A Ray of Hope
 第3楽章 Rondo for A Dream
 第4楽章 Finale for Future
8.Spanish Waltz / アルバム「Eartheory」「DUET with Makoto Ozone」より

アンコール
Enc 1.Morning Bliss / アルバム「Eartheory」より / ピアノソロ
Enc 2.Life With you / アルバム「SALT」より / with Richard Stoltzman
Enc 3.Preciousness / アルバム未収録

開演16:04 第1部終演16:50 第2部開演17:10 第2部終演17:55 アンコール開演18:00 終演18:25

SALTさんソロデビュー30周年の大イベントと言える東京フィルハーモニー交響楽団との共演、猛暑の中を行ってきました。
SALTさんの曲にはストリングアレンジが素晴らしく美しいものが多く、それをスケールアップさせたフルオーケストラで、しかも東京フィルならどうなるのだろう、あの曲は?この曲は?と思いを巡らせていました。

SALT「30年経ってまさかこのようなコンサートができるとは思いませんでした」

自らの曲が東京フィルで演奏されて、それを自らが特等席で聴くことができる喜び
のようなものがSALTさんからビンビン伝わってきて、

SALTさんよかったねえ、それを一緒に聴ける私たちも幸せで、
みんなを引っ張りつつ自分らしさも十二分に発揮している演奏だったこともとっても嬉しくて、
この人に出会えてずっと聴いてきて本当にラッキーだった、ありがとう!

というのが率直な感想です。
(ちょっと上からで、かつオーバーかもしれませんが、お許しください)


開演してすぐに「凪」から「Earth Beat」へ。
やっぱりフルオケの重厚感は違います。ストリングスの伸びも分厚い。それを聴くSALTさんの楽しそうな表情。
「凪」から始まったということは「Earth Beat」に繋がるのか・・・もう「Earth Beat」なのか・・・。新作も「Spanish Waltz」も控えてるからか・・・と膨らむ期待感。
(このとき、演奏プログラムを私は見てませんでした)

オーケストラのアレンジのことなど私はまったく詳しくないので書けません。
「凪」も「Earth Beat」もオケで何度かは聴いたことはあり、それらとは違っている、重厚になっている、というのがわかったくらい。
それは、今回SALTさんが全曲の再アレンジをしたことはもちろん、東京フィルだったこと、指揮が川瀬賢太郎さんだったこと・・・が絡み合って実現されたのでしょう。

それにしても「Earth Beat」は壮大な楽曲です。
これを28年前(1995年)29歳で書いた塩谷哲って!
アルバムでは、これからというときにフェードアウトしていくイメージですが、この日は十分に堪能。
ストリングスをはじめ、自然に入ってくるそれぞれの楽器、ときにハッと存在を気づかされる楽器たちによって世界が盛り上がり、それらを聴きつつ存在感もしっかりあったSALTさんのピアノ。

私はズブのシロウトなのに偉そうで申し訳ないのですが、オーケストラの中のピアノのポジションは難しいのではないのでしょうか?
弾きづめもできないし、他の楽器に比べれば音量はどうしても弱くなってしまう。
その中でいかにピアノを引き立たせるか、それがアレンジと演奏の見せどころで、注目点の一つでした。

加えて、SALTさんの曲をフルオケ・再アレンジバージョンで聴けるというのも今回ならでは。
したがってピアノが聞こえていないときもいいし、もちろん聞こえているときも、という、言わば2倍楽しめるコンサートになるのでは?と考えていたのです。
この日の「Earth Beat」を聴いて、こんな私の望みは確信へと変わりました。

ストリングスが大好きな「Life With You」
フルオケで聴いたら絶対ウルッときてしまうよ、と思っていたら、案の定でした。
弦楽器のやさしさ、特に低音の伸びが心に響いて、そこに現れるピアノが奏でるメロディーの美しさ。
この曲の真骨頂が、いちだんと増幅されたような。
なんか厚みも感じたなと思ったら、木管とホルンだったのですね(プログラムにある、SALTさんご本人のコメントによると)。

そして、SALTさんがオーケストラと共演するときのもはや定番となっている「Rhapsody in Blue」
ガーシュインの音源も何度も聴いて臨みましたが、やはり生音の迫力は違うし、その中でも毎回何かが変わっているように感じます。
この日のピアノのソロパートは特に印象的で、熱演でした。

休憩をはさんで、第2部は「Wishing Well」から。
この曲のストリングスも美しくて、オーケストラで聴きたかったのです。
メロディーの入りは1回目はバイオリンで、2回目はピアノ(だったと思います)。
ストリングスもSALTさんも好きな私にはたまらない編成です。ウルッとくるよ、そりゃ。

が、途中で様相が変わります。ちょっとアップテンポに。
これはいい意味で驚きました。初めて聴くアレンジ。やられた!
すぐに戻ったのですが、遊び心にニンマリして聴き終えました。

続く「Pray」はもともとSALTさんが映画音楽を意識して書いた曲。
前世パリジャンの雰囲気も醸し出しつつ、オーケストラにマッチした楽曲です。
ストリングスのメロディーがよかったなあと思っていたら、チェロでした(前出のご本人のコメントによる)。
こうしてストリングスからピアノへとつながると、ピアノの良さがいっそう際立つのですよね。
いい曲だなあと、再び実感。

いよいよ「Elegy for Piano and Orchestra」
演奏予定としては「書き下ろし新曲」となっていましたが、正確には「焼き直し新作」だそうです。
昨年(2022年)11月に行われた小曽根真さんとのデュエットコンサートのために書かれた「交響的エレジー」が、オーケストラ曲としてアレンジされました。

「交響的エレジー」は私も生で聴きました。
2台のピアノでここまでできるのか!と大変な衝撃を受けた楽曲。
それをもう一度、オーケストラで聴けるとは思いませんでした。

引き込まれて集中して聴いていたので、メモも取れず。
今となっては「すごかった」としか言えません。
プログラムで4つの楽章のタイトルと説明をあらためて読んで、そうそう、そんな感じだったなあと。
またぜひ聴きたい!音源が欲しい!1回で理解が進まない我が身が残念です。

最後は「Spanish Waltz」
ソロで聴いても、トリオで聴いても、デュエットで聴いても、それぞれの形で盛り上がる曲です。
もちろんオーケストラでもそうで、私も何度か聴きました。

この日の東京フィルとの共演では(今までとの違いを具体的に書けないのがもどかしいですが)重厚さがさらに増し、それに呼応するようにピアノも力強く、メリハリもより効果的で、盛り上がり方も強烈でした。
トリオ版でいう、ベースのソロからピアノとのかけ合いにつながるところも、ドラマチックになっていてよかったなあ。

演奏後も拍手が鳴り止まず、スタンディング・オベーション。
SALTさんと指揮の川瀬さんがステージから出ては入ってを繰り返すこと3度でした。

アンコールは「Morning Bliss」から。
1つ1つの音を確かめられるので、コンサートのサウンドチェックでよく弾くそうです。
「サウンドチェックの曲をアンコールで弾くのもどうかと思いますが」と。

東京フィルの方々がいる前で、完全なピアノソロ。
SALTさんもみなさんも緊張しないのかな、とちょっとハラハラしたのは心配しすぎかな?
きれいな音がよく響いて、心が洗われます。
オーケストラでもいつか聴いてみたい曲です。

この日はアーティストも何人か観に来られていて、SALTさんからご紹介がありました。
岩城直也さん、井上陽介さん、上妻宏光さん、小曽根真さん(前日に帰国されたそう)。
(小曽根さんは開演前にロビーでお見かけしました。マネージャーのリッキーさんと話しておられました)

そして、リチャード・ストルツマンさん。
昨年(2022年)8月の「Spirit of Chick Corea Band」でも共演した、クラリネットの第一人者です。
たまたま日本に来ていたそうで、なんとステージに登場して「Life With You」をピアノとデュエットで。
リチャードのお気に入りで、共演すると必ず演奏する曲です。

第1部でオーケストラ版を聴きましたが、嬉しいハプニング!
クラリネットの音もピアノの音もやさしい。
いつ聴いても、リチャードのこの曲への想いが伝わってくるのです。

途中、ちょっと間があいてハラハラするところがあるも、それが会場の全員に笑みをもたらし、とてもほっこりした雰囲気になりました。
この感じもSALTさんらしいなあ、SALTさんが引き寄せるのだなあと。
いいステージでした。

リチャードと2人でステージを出てから、再びSALTさん登場。
「クラシックコンサートでの ”出て・入って” に慣れてないので勝手がわからない。でも、リセットされるみたいでいいですねえ」と。

ラストは「Preciousness」
この曲もストリングスが美しく、その分ピアノの音も映えていました。
バイオリンでせり上がってくるところが印象的で、静かだけどピアノの力強さも感じられて、未来を見据えた、ラストにふさわしい曲だと思いました。


ロビーにはSALTさんと親交のある方たちからのお花も飾られ、30周年という一つの区切りを迎えられたのだなあと実感しました。
お塩ひかえめ(ファンクラブ)有志からのお花もありましたよ。いちばんきれいだったかも。

この日のステージでSALTさんがまた進化することは間違いありません。
ずっと見届けさせてもらいますよ、と心に思いながら、会場を後にしました。

(JRよ、ちゃんと動いててね、とも思いました。行くとき南浦和で止まったので 笑)

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