SHIBUYA JAZZ CROSSING 8 season31 塩谷哲 ピアノソロ(東京・渋谷区文化総合センター大和田 伝承ホール 2023.10.28)

「SHIBUYA JAZZ CROSSING 8 season31 塩谷哲 ピアノソロ」
日時:2023年10月28日(土) 開場15:00 開演15:30
会場:東京・渋谷区文化総合センター大和田 伝承ホール
出演:塩谷哲(pf)
料金:一般4,000円 当日4,500円(全席指定・税込)、未就学児童は入場できません
※渋谷区主催イベント SHIBUYA JAZZ CROSSING に参加します
→残席チェック
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※チケット発売日:8/26

演奏曲


第1部 15:30-16:16
1.枯葉
2.Over the Rainbow
3.いつか王子様が
4.A Brand New Day / 塩谷哲 / アルバム未収録
5.Keep Smiling! / 塩谷哲 / 「SALT」「PIANIZMIX」
6.Blue Bossa
7.All the Things You Are

第2部 16:34-17:41
8.My Favorite Things
9.Elegy for Piano and Orchestra 第二楽章 / 塩谷哲 / アルバム未収録
10.Life With You / 塩谷哲 / 「SALT」「the Selection of SALT」
11.あこがれのリオデジャネイロ / 塩谷哲 / 「88+∞」「the Selection of SALT」
12.Ladies in Mercedes / Steve Swallow / 塩谷哲「EARTHEORY」
13.Spanish Waltz / 塩谷哲 / 「EARTHEORY」「DUET with Makoto Ozone」
Enc.What Can We Do? / 塩谷哲 / 古澤巖×山本耕史「Dandyism Banquet」

レポート

渋谷区が主催する、良質なジャズを気軽に楽しめる公演「SHIBUYA JAZZ CROSSING」に行ってきました。
調べてみると2012年か13年にもSALTさん出演の情報がありますが、ワンマンでのソロは今回が初めて。
過去には日野皓正さん、山下洋輔さん、渡辺香津美さんも登場したこのイベントに「選ばれて光栄です」とSALTさんもおっしゃってました。

人気企画ゆえか、会場は満席。
FCお塩ひかえめの先行予約がなく、ぴあの抽選で当選したのはラッキーだったのだなと後で知りました。

ハロウィン前の週末にあたり、区長の「渋谷に来ないで!」という呼びかけにやや躊躇したものの、せっかく当たったのでやっぱり遠征しました。

黒ずくめのいでたちで、SALTさん登場。

1.枯葉

初めの方は「Heat of Mind」っぽいと感じたのですが、「枯葉」でした。
SALTさんの秋のソロコンサートではお馴染みです。

ジャジーな曲調から音が多くなってきて、だんだん強く。
枯葉が激しく舞っています。

スローに落ち着いて、♪枯葉よ~、とエンディング。
今日はジャズのイベントなので、こういう感じで進んでいくのかな?

【MC】(だいたいの内容です)
・今日は満席です。ありがとうございます。ベテランから若手まで注目するアーティストが出演している、このイベントに選んでいただいて光栄です。
・「伝承ホール」ではいろんな公演もされていて、音の響きも違うので楽しみです。
・ジャズのスタンダード「枯葉」を弾きました。いつものソロコンサートのように、弾きたい曲を紙にリストアップしてあります。みなさんの様子を察知して、ここから選んで・・・
・ジャズにこだわらずに弾いていきたいと思ってます。とはいえ・・・

2.Over the Rainbow

が、ゆっくりとジャジーに始まりました。
進むにつれて熱を帯びてきて、それがだんだんおさまっていく。
引き込まれる演奏は今日も健在です。
なにか、さざ波が引いていくような感じも受けました。

3.いつか王子様が

シームレスにこの曲に自然とつながりました。
次第にアップテンポに。
SALTさん、この曲が好きなのだろうな、といつも伝わってきます。そういう演奏が私もお気に入りです。

【MC】
・いろいろ弾きました。
・(入ってきたお客さんに)いらっしゃいませ!まだ1曲しかやってません。
・オリジナルの曲も弾きます。

4.A Brand New Day / 塩谷哲 / アルバム未収録

久しぶりに聴けました。
ヤマハの銀座ホールができて、そこでのコンサートにインスピレーションを受けてできた、仮タイトル「GINZA」だった曲。
銀座ホール紹介YouTubeでのBGMにも使われました。
音源化を待つこと数年です・・・。

メロディーから展開へ。流れるような疾走感が好きです。
強くなったり弱くなったり自由に羽ばたき、ちょっとしたブレスが入ったり、足踏みを交えたり。
印象的なメロディーに戻ってエンディングです。

5.Keep Smiling! / 塩谷哲 / 「SALT」「PIANIZMIX」

この曲も聴けてよかった!久しぶりのような気がしますが気のせいかな?
かわいいイメージがしました。

【MC】
・「Keep Smiling!」という曲でした。えーと、この曲の前に何を弾きましたっけ?(覚えてないのは)ヤバいなあ。みなさん、おとといのお昼に何を食べたか覚えてます?何食べたかなあ?
・前半は45分で、と言われています。ジャズに戻ります。「枯葉」は弾いたんでしたよね。

6.Blue Bossa

1963年にトランペット奏者のケニー・ドーハムが作曲した、ジャズのスタンダード。
軽く弾かれていて、ボサノバがおしゃれです。
左手による伴奏のフレーズが何度も繰り返されていたところが、印象的でした。

7.All the Things You Are

同じくスタンダード。作曲者はジェローム・カーンで、1939年までさかのぼります。
「Blue Bossa」同様、この曲もSALTさんで何度か聴いています。というより、SALTさんで知りました。
この日も心地よくて、強さも弱さもあって、引きつけられました。

【MC】
・一部はジャズ色いっぱいで演奏しました。まだ帰らないでね。

8.My Favorite Things

二部はこの曲でスタート。
聴き馴染みはあったものの、実は曲名が出てきませんでした。SALTさんの演奏では私は初めて。
映画「サウンド・オブ・ミュージック」の中の1曲です。

メロディーがあまりにも有名で、だからこそ遊びに行っても安心して帰って来られる、弾いてるうちにどんどん広がって、どうなってしまうのだろう、そんなひとときでした。
大イベントだった東フィルとの共演を終えて解き放たれたSALTさん!と感じたのは、私の考えすぎかもしれません。

【MC】
・自由にやりすぎました。
・ピアノには無限の可能性があって、自分が変わればピアノも変わるんです。
・指で押すと弦が弾かれてこのあたり、ここで音が鳴っている。そんな全体のことがわかってきたのは40代になってからです。

・自分が弾きたい音とのギャップがだんだん埋まってきました。50代のいま、まだ埋まっていません。まだ自分ではないです。
・ピアノは会場によって違うので、まず自己紹介しないと。「はじめまして。塩谷哲です。ムロツヨシにそっくりですけど」って。
・弾くたびに課題が見つかります。60代、70代になると弾きたい音がもっと出せると思うので、楽しみです。

・今年はソロデビュー30周年、7月に大宮で東京フィルハーモニーの皆さんとコンサートを行いました。
・「Rhapsody in Blue」以外は自分の曲だったのですが、オーケストラ用の楽譜を書くのは大変でした。
・そのコンサート用に「Elegy for Piano and Orchestra」という新曲を作りました。今日はその中の第二楽章をピアノ1本で、表現をほぼ変えずに。弾けるかなあ?

・今は難しい世界で、一人一人がどう生きるかを問われている時代だと思います。それを考え抜いて、一筋の光明が見えてくる、そのようなことを曲にしました。
・ファンファーレが聞こえてくるようなところがあります。そこにも注目して聴いてください。

9.Elegy for Piano and Orchestra 第二楽章 / 塩谷哲 / アルバム未収録

この曲を再び聴けるとは思いませんでした。
7月の大宮ではただただ聴くばかりで、後からプログラムの説明を読んで納得。
この日もMCでの紹介があったおかげで、少しはついていけたような気がします。まだまだ全然ですが。

抑圧された世界、迷い、それがずっとずっと続いて、でもやがて明るい希望が見えてきて、ピアノがファンファーレのように鳴ります。力強い音で。
オケではどんな感じだったのでしょう?もう一度聴きたい!
このようなドラマチックな、静から動、動から静のある曲を作るのも演奏するのも、SALTさんがSALTさんたる所以だといつも感じます。

落ち着いて静寂になって、エンディング。

【MC】
・作曲すると本当に勉強になります。名曲を分析すると、それは英智のかたまりですから。
・ボクは前世パリジャンなのでフランスの作曲家の曲もよく分析するのですが、構成したときの気持ちが伝わってきます。ここでこう来るから、こういう気持ちなんだ、とか。
・そして実演して「うわっ」となります。1回目がこうで、2回目でこう来るのか、とか。でも、やりすぎたらダメなんですね。
・ボクも後世に残るような曲を作れたら、と思います。

・次は1stアルバムに入っている曲で、ずっと弾き続けています。

10.Life With You / 塩谷哲 / 「SALT」「the Selection of SALT」

この日もやさしい音でした。
大宮ではオケで聴いてストリングスでウルッときましたが、もちろんソロでも「ライフ・ウイズ・ユー」の世界です。

いつもながら、終わってしまう終わってしまうと思いつつの最後のAメロ。
終わってしまいました。

11.あこがれのリオデジャネイロ / 塩谷哲 / 「88+∞」「the Selection of SALT」

やっぱりこの曲も、ですよね。
この日は、よりフランクな雰囲気でした。

が、佳境に入ってせり上がってくる感じ。
そしてていねいな音運びを経て、徐々に熱くなってエンディング。

【MC】
・オルケスタ・デ・ラ・ルスというサルサのバンドでいろんな国に行きましたが、ブラジルだけは行けませんでした。ブラジルはポルトガル語で、憧れでしたけど、まだ行けてません。
・やはりアマゾンという、他と交流があまりない地域の存在が大きいのでしょうね。固有の文化が生まれるので。キューバもそうですね。

・イタリアも島によって文化が違うといいますし、ナポリとローマも違います。ジローラモさんにもカゲがあるのかもしれません。
・「サルサ」には「ミックスされた」という意味があります。デ・ラ・ルスでサルサのようなラテン音楽を10年やってました。

・次は叶姉妹のような人の曲です。

12.Ladies in Mercedes / Steve Swallow / 塩谷哲「EARTHEORY」

くるくる回るフレーズが心地よく、体が自然と動きます。
小刻みに重ねられる音たち。上から降りてきたものをそのままピアノにしているような。

途中でスローになったりして、今日も自由です。遊び心が満載。
最後に向けて回転が激しくなり、ジャン!と終わりました。

【MC】
・ラテン音楽は「クラーベ」という3:2のリズムで構成されています。現地の人はクラーベを日常で感じながら生活しているそうです。体に染みついているんですね。フラメンコでいうと「コンパス」になります。
・もう、当たり前すぎて、説明できないんですね。
・知らないことがまだまだ多いです。

・でも、小曽根真という人はたくさんのことを知っていて、そんなことしてるの!?ということをしてるんです。
・共演してる人の音を聴くんです。聞こえてるのです。ボクが弾いた通りに弾けるのです。
・(変わりたい、変わった ←私のメモにこうあるのですが、どういう意味だったか・・・。小曽根さんのようになりたい、変わりたいと思ってやってきて、変われてきた、かな?申し訳ありません)
・「小曽根(さんと共演する)前・小曽根後」で、とても影響を受けました。

・えーと、何分に終わるんだったっけ?
 (客席最後尾にいた、おそらくマネージャーのリッキーさんから「30分!」の声)※「30分」だったと思います
・それではスペインを想って作った曲を。色のイメージは赤です。

13.Spanish Waltz / 塩谷哲 / 「EARTHEORY」「DUET with Makoto Ozone」

ガーン!と始まりました。
早めにメロディーに移り、静かめに進行。

しかし、我慢できないかのように、次第に熱を帯びてきて
大きく盛り上がったところで入る休息(トリオならベースソロのところです)。
今日もメリハリ効いてます。引きつけられます、本当に。

そしてもう一度坂道を上って上って上っていって・・・・・最後はジャジャーンと決まりました。
鳴り止まない大きな拍手。

アンコールですぐ再登場のSALTさん。
【MC】
・時間を勘違いしてました。だいぶオーバーしてます。
・最後は、コロナ禍でボクたちは一体何ができるのだろう?と考えて作った曲です。今日はありがとうございました。

Enc.What Can We Do? / 塩谷哲 / 古澤巖×山本耕史「Dandyism Banquet」

やはりソロのラストはこの曲ですね。
とつとつとして、きれいな音色が心に染み込みます。
ステージの真上やや奥から、ピンライトがピアノに。とても印象的でした。

—–

私にとっては2月の福岡以来、8か月ぶりのソロコンサートでした。
東フィルとの共演を経験して、肩の力がうまく抜けて、より自由になった印象を受けました。

オリジナルはどれも好きで、「今日も聴けてよかった~」という安心感、ホーム感のようなものと、
第二楽章を聴けた嬉しさがあります。
これから何度か聴ける機会があるでしょう。音源がないだけに、しっかり聴かなくては。

満席の客席も暖かい空気を作り出していました。
SALTさんは前日も「ヤガ祭り」に出演していて、午前中もちょっとしたハプニングがあり(←ファン友から聞きました)、スケジュールはちょっとハードだったようですが、会場の雰囲気にも助けられたのではないでしょうか。

ハロウィンに負けずに、参加できてよかったです。

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