「塩谷哲トリオ Live 2010」東京3日目2nd
日時:2009年4月29日(木・祝)20:45~22:35
会場:ブルーノート東京
出演:塩谷哲トリオ:塩谷哲(pf)、井上陽介(b)、山木秀夫(ds)、飛び入りで多和田えみ(vo)、TOKU(flgh)
セットリスト(大阪2日目2ndと同じですが、アンコールで多和田えみさんが飛び入りし7が追加、TOKUが8に参加されました)
1.Magic,Dream,or True Love? / 「88+∞」
2.Delicious Breeze / 新曲
3.Walk Alone / 「solo piano = solo salt」
4.Soft Cookie Walts / 井上陽介「LIFE」
5.A Man in Paris (Intermezzo) / 「88+∞」
6.Mr.Madonna / 「solo piano = solo salt」
アンコール
7.Yesterday Once More (with 多和田えみ) / The Carpenters
8.Flying Shoes (with TOKU) / 「3!」
ツアー全体の感想
今回のツアー全体を通した感想をここに書きます。
塩谷哲トリオの大ファンである私にとっては、とっても至福の時でした。
やっぱり強行軍してよかったー。
同じように遠征しているファンの方ともたくさんお会いしました。
この塩谷哲トリオにはそれだけ引きつけるものがあります。
2009年2月のトリオのライブ同様、新アルバムなどのリリースがない状態でのツアー。
ということは、今までの曲を新たなアレンジで、進化した形で演奏してもらえるのです。
それはそれで非常に楽しみ。
2009年2月はとっても盛り上がりました。(東京で2日間だけだったのがなんとも惜しかった・・・)
きっとそれに匹敵するものになるだろうと思って観ました。(この時点でハードルをかなり上げてしまってましたね)
以下、曲別の感想です。(演奏順とは異なります)
「Delicious Breeze」
一番に書いておきたいこと、それは新曲の「Delicious Breeze」です。
今までの曲が楽しみだと言っておきながら、新曲のことですみません。
でも、この曲は光り輝いていました。
このツアーのためにソルトさんが書き下ろした唯一の新曲。
ツアー数日前に完成して前日にタイトルが決まったというソルトさんのいつものパターン。
「ストレートに明るいジャズを書きたかった」という言葉通りの、まっすぐなアップテンポの4ビート。(多分。違ってたらごめんなさい。こういうリズムです[YouTube 音が出ます])
全体を通して流れている陽介さんのベースの軽快なジャズ王道的なリピートと、山木さんのドラムのリズムが心地いいったらありません。
まさに「気持ちのいい風(Delicious Breeze)」です。
この曲のピアノは私には「すごく攻めている」印象。
音が強いという「攻めている」ではなくて、激しく指が動いているのです。
メロディアス。美しい旋律。
ソルトさんがこういう曲を書くのはとても久しぶりなのでは?
いろんなミュージシャンとセッションしてきて、もちろんトリオでの今までのプレイも踏まえて、ソルトさんの現時点での集大成というか、影響を受けて進化してきたこと全てがこの曲に詰まっているというか、「突き抜けた、ストレートなソルトさん」が表現されていると私は感じました。
なんか、それが伝わってくるのです。まっすぐに。
四の五の言ってますが、とにかく楽しいんです。ウキウキするんです。
「私はやっぱりソルトさんの曲が好きなんだ!」と改めて実感できる曲。
そんな要素がいっぱい詰まっています。
聴く回数を重ねていくにつれて、「Delicious Breeze」が本当に楽しみになりました。
これを書いている今も、頭の中で鳴っています。(幸せ)
この曲にもソルトさん特有のジャーン!(パーン!かな?)とはじけるところが随所にあって、そこでソルトさん自身も飛び跳ねます(笑)
そしてジャーン!に続いて陽介さんのボンボンボンボン♪というベースが浮かび上がってきて、それが気持ちいいというか、かっこいいというか。
憎らしいほど心を掴まれます。
こんな曲、よう書くなあ~、ソルトさん!
ピアノがソロで軽快に、徐々に力強く展開した後にはベースのソロ。
陽介さんは最初はおとなしめでも、ついにはベースで歌い出してしまうんですよね。
そりゃピアノであんなに盛り上げられたら、そうなります。
ソロの合間にもピアノのメロディの伴奏が小さく聞こえてきて、またそれが心地いい。
ステージの初めの方だったので、この曲では陽介さんはまだ控え目な方?でした。
後半ではベースを回したり担いだりして、無茶苦茶してましたから(笑)
ベースソロに続いてはピアノとドラムのかけ合いです。
だいたい10回くらい続きます。
今回強く感じたのは、きちっと○小節演奏してからハイどうぞ、ではなかったということ。
短いときもあり長いときもあり、相手のパートに浸食しているときもあり。
短いときは「えっ!もういっちゃうの!?」とハラハラ。
自由自在とはこのことで、目が離せませんでした。
お互い笑顔ながら、時空を超えて楽しんでる2人。
かけ合いが終わって(終わってしまって)ピアノがメロディに戻ります。
ジャーン!があってボンボンボンボン♪があって曲がクライマックスに向かっているのが肌で感じられます。
ああ、もう終わってしまうのか!
エンディングを示すフレーズのリピート、そしてソルトさんがピアノの枠を打楽器のように軽く叩いてから「チャン♪」と軽く鳴って終わります。
プレイヤーもリスナーも思わず微笑んでしまいます。オシャレ~!
「Delicious Breeze」この曲も「Flying Shoes」や「Fun Express」などと同様に、塩谷哲トリオの代表曲になること間違いなし!
断言できます。
サイン会での感想でも評判がよかったようです。
ものすごく残念なことに、書き下ろしの曲なので音源がまだありません。(頭の中では鳴ってますが)
「トリオの次回作にぜひ入れてください!」と懇願はしておきましたが、それまで待てないというのが正直なところ。
5月8日のFM COCOLOで放送されることを祈るばかりです。
※2010年5月8日追記 放送されました!
4月21日1stステージの
・Magic,Dream,or True Love?
・慈愛
・Delicious Breeze
・Soft Cookie Walts
・In A Driving Rain
の5曲。45分ほど時間をとってオンエアしてくれました。感謝!
ベースの音が小さかったのが残念。パソコンで聴いたからかな?
それに、曲が終わるのと重なるくらいに拍手は起きませんから。実際はわずかに間があります。
細かい編集してあるな、と思いました。
「Magic,Dream,or True Love?」
アルバム「88+∞」から2曲フィーチャーされたのも、ちょっとした驚きでした。
1998年リリースの、SALT BAND主体のアルバム。
私が「SALT III」でソルトさんに出会って、この「88+∞」もシャワーを浴びるが如く聴き込んで、初めてライブに行ったのがこのアルバムのツアーでした。
あまりに衝撃的で、放心状態だったのを覚えています。(管理人についてをよかったら見てください)
でも今ではこの頃の曲が演奏されることは少なくなりました。(「あこがれのリオデジャネイロ」を除いて)
私自体が遠ざかっていたことも否めません。
選曲のヤマが外れました(笑)
なので「Magic,Dream,or True Love?」を最初に聴いたときは何の曲かわかりませんでした。
わかってからもメモするタイトルを間違えたほど。
アレンジはオリジナルとはガラリと変わっています。
十分に低くて重いリフが最初から曲全体を支配しています。
こういう曲になるのか!と唸ってしまいました。
ピアノによるリフ、ベースによるリフ。
グルーブ感に包まれてピアノがメロディに入ります。
オリジナルのように軽快ではありません。
スローに。溜めながら。
サビ前の盛り上がるところに差し掛かると、ベースはボンボンボンボン♪ボンボンボンボン♪とジャズの王道フレーズを鳴らし始めます。
その耳障りがすごくいい。
オリジナルでは露崎春女さんが歌っているところ(サビ)をピアノがなぞっていきます。
そこが終わるとオリジナルでは超絶と言っていいほどピアノが弾き込まれているのですが、このライブではそんなに弾かれません。
敢えて弾かないようにしている感じ。
ベースとドラムはリフを続けます。
ピアノの左手もリフだったのですが、やがて離れて自由に。
次第に音が多くなり、盛り上がってきます。
それについていくドラム。
ハッと気づくとドラムもちゃんとそこにいます。
息はピッタリ。
またサビになった後、浮かび上がるリフを挟んでベースのソロ、ドラムのソロへつ続きます。
陽介さんはいつものように自由。
初めはスローなのですが徐々にアップ。
左手が滝のように落ちるのを繰り返したり、フレーズをリピートしたり、チョッパーしたり、日によって違います。
山木さんは長くくすぶった後にシンバルのみのかっこいいソロ。
ドラムに移っても叩きづめではなくブレスを取りながら、だんだん盛り上がっていきます。
そしてメロディに戻るピアノ。
高音も鳴っています。
それがまた印象的。
サビが繰り返されます。二度、三度と。
そのたびに3人と客席のレベルは上がって、最後はピアノが「ピロロロロ~~~」と強く長く弾いて劇的にエンド。
見事にトリオの曲へと化していました。
「A Man in Paris」
「88+∞」からはもう1曲。「A Man in Paris」
これもオリジナルとは全く違って、ドラムがフィーチャーされています。
山木さんがもう、かっこいいのなんのって!
こういう構成に作り替えたソルトさんもさすがというか、かっこいいというか。
きっと山木さんに思いっきり叩いて欲しかったのでしょうね。
その場面を提供してもらって客席も嬉しかったです。
イントロがピアノで始まるのはオリジナルと同じ。
でもメロディとのつなぎの部分から山木さんが暴れ出します。
シンバルの音がとても響いて印象的。
この曲は元々美しいメロディアスな曲ですが、ピアノの曲というイメージが強く、ここまでドラムが出てくるとは予想できず、新鮮でした。
山木さんにすっかり酔いしれていると、急に落ちてピアノが続きのメロディを。
そうだそうだこの曲だったんだ!これから始まるんだ!
ピアノは初めはスローに、やがてだんだん早いパートが出てきます。
左右に忙しく動く指。高音にこだわる指。強く熱くなるピアノ。それに応えて一緒に盛り上がるドラム。
ピアノが早いとドラムも早い。ピアノが強いとドラムも強い。
いや逆かも。ドラムが早いとピアノも早い・・・。
強く打つ音も2人の呼吸は一緒です。
一体感に思わず引き込まれます。
続いてピアノは急激に?クールダウン。
山木さんの一人舞台に入ります。
これはもう、曲がどうだとかこうだとかではなくて、圧倒されました。
メモにも毎回「すごい」としか書けないくらい。(表現力がなくてすみません)
山木さんしかできないシームレスプレイ。真骨頂。
最高潮まで上り詰めたら、急に落ちてピアノがメロディを。
この感覚、さっき味わいました。
そうだそうだこの曲だったんだ!でも今度は終わってしまうんだ!
陽介さんの弓も加わって余韻が増幅されます。
オリジナルのように3人が小さくなってエンディング・・・「A Man in Paris」なんてカッコイイんでしょ!
なんか書いてて誉めすぎ?のような気もしますが、、ホントなんです!
「Soft Cookie Walts」
この曲にも楽しませていただきました。
井上陽介さんの愛犬クッキーちゃん。
井上家にお子さんが誕生し、クッキーちゃんに注がれていた注目度が一気にお子さんへと移ってしまいました。
ショボンとなってしまったクッキーちゃんのことを書いた陽介さんの曲です。
塩谷哲トリオにはアルバム「EARTHEORY」に「HARD COOKIE DANCE」(井上陽介作曲)という曲があり、クッキーちゃんが元気に走り回っているところが楽しくハードに表現されています。(この曲も盛り上がるんです)
ファンには馴染みのクッキーちゃん。
ミニチュアシュナウザーなので、なんとなく姿も顔も浮かびます。
そのクッキーちゃんがショボンとしている曲。
元気なく「ワンワン、ワンワン」と鳴くフレーズが何度も出てきます。
・・・という基礎知識があれば、この曲を一層楽しめます。
ライブではソルトさんが曲の前にMCで説明。(大阪1日目1stのみ曲の後のMCで説明)
もちろん基礎知識がなくても、充分いい曲です。
陽介さんのソングライターとしての才能にも毎回驚かされます。
「ワンワン、ワンワン」と鳴くところがこの曲のポイントになっています。
構成上も、鳴き方も。
美しいメロディを小休止して出てくる「ワンワン」
それだけでも少し笑いを誘うのに、陽介さんが弾く「ワンワン」は毎回違っていて、高くて泣き出しそうな「キャンキャン」から、低くて今にも噛みつかれそうな「バウバウ」まで。
飛び跳ねている「ワンワン!」から、拗ねている「ワンワン↓」まで。
そのたびにクッキーちゃんの姿が目に浮かんで、笑ってしまいます。
弓も自由自在に操る陽介さんの表現力に脱帽。
ピアノの「ワンワン」にも高い「ワンワン」から低い「ワンワン」、強い「ワンワン」から微かな「ワンワン」。
ドラムの「ワンワン」にも強弱があり、完全に3人は遊んでいました。
もちろん3人で同時に鳴く「ワンワン」もあり。
同時に「ワンワン」と鳴くはずのところをわざと鳴かなかったり、もありました。
いっぱい「ワンワン」って書いてすみません(笑)
メロディもいいんです。
ベースで弾くメロディ、ピアノで弾くメロディ、それぞれに世界があって優しく包み込んでくれます。
その流れでベースのソロになるのですが、やっぱり陽介さんは徐々に暴れ出すのですよ。
いや、暴れ出すのはクッキーちゃんか?
両指はクモの足のようにダイナミックに動き、上に行ったり下に行ったり。
右指が下で動きながら待っていて、左指が上から滝のようにスッと落ちていくのを繰り返したり。
ベースにかぶさって高い音を切なく出したり。
かと思えばベースを前後に揺らしてノってみたり。
右足を上げたり、弓に持ち替えたり、弓でもチョッパーしたり、楽譜台に弦をこすりつけたり、ベースを右回転・左回転したり、ついには持ち上げてみたり。(あれは別の曲だったかな?)
フレーズもなぜか笑ってしまうものが出てきたりします。
ソルトさんも山木さんも完全に楽しんでました。
唯一無二の素晴らしいベーシストです。
ピアノのソロも静かに始まるのですが、進んでいくうちに広がり・奥行きが増していき、とても雄大な曲になります。
「ワンワン」も鳴かず、ドラムに任せて。
クッキーちゃんから一旦離れて、この曲が持つ良さに身を任せてどんどん弾いているような。
私はこの展開もとても好きでした。
熱くなって盛り上がって、再びベースの美しいメロディに戻ります。
この構成が何とも言えず、心を掴まれます。
エンディングへ向けて小さく進んでいる中、ピアノがちょっと強くなったり、ベースが浮かび上がってきたり。
最後は全てを包み込んだピアノが小さくなっていき、ベースが微かに「ワンワン」と鳴いてエンド。
クッキーちゃん、疲れて寝ちゃったのかな?
全編を通してクッキーちゃんへの愛情が充分に伝わってくる、ほっこりできる曲でした。
陽介さん、いい曲書くなあ~!
「慈愛」
ソロアルバムの「solo piano = solo salt」からはまず 組曲「工場長の小さな憂鬱」の中から「IV 慈愛」
この曲は名曲だと思っています。
組曲の中の曲としても、ソロの曲としても。
なのでトリオでの「慈愛」には正直、期待半分、不安半分でした。
私の中で組曲の「慈愛」のイメージが大きすぎるのです。
それほどこの曲に対する思い(と言えばいいのか?)があります。
私は初めは「組曲の慈愛」を引きずっていて、「トリオの慈愛」に集中できませんでした。
トリオでの「A Man in Paris」はスッと入ってきたのに、自分でも不思議です。
ちゃんと受け止めて聴けるようになったのは2度目からです。
もちろん私だけだと思います。3人の演奏がどうのこうの言ってるわけではないので誤解なきようにお願いします。
ピアノのみから始まります。
名古屋ではメロディに入る前にプロローグがありました。
ジャズっぽくメロディが進みます。
2回目のメロディからベースとブラシが加わって、トリオの世界になります。
ソロとは違う世界。ディープです。
ピアノも溜めを作りながら、ジャズ度を増します。
ソロではそこから盛り上がるパート(サビと言っていいのかな?)に向けて坂道を登っていくのですが、トリオではベースの短いソロが挟まります。
そして私が好きなサビ。ジャジーになっています。そうか、こうなるのですね。
うまく書けませんが、ブレスを取りながら、ソロとはまた違う訴えかけを感じました。
一旦静まって、ピアノのソロ(展開)に入ります。
よく考えると「慈愛」の展開は初めて聴くのかも。
去年の「solo piano = solo salt」のツアーのときはどうだったかなあ?
組曲として演奏されたので展開はなかったと思うけど。。
でもそれ以降でも「慈愛」は聴いたような・・・そのときは?
ライブレポートをサボって書いてないものもあるので、こんな曖昧になるのだ・・・
ダイナミックで劇的なものさえ感じさせる展開。
オリジナルからは想像がつきませんでした。
劇的というところにクラシカルなものも感じ取れた、というのは私の後付けの解釈かな?
そこからクールダウンしてベースもシンバルも止まり、ピアノだけにスポットライトが当たります。
ゆっくりと、間を取りながらのフリーな演奏~メロディのフレーズへとつながります。
毎回息を飲んで引き込まれるところでした。
ベースとシンバルが再びやさしく鳴り出し、フレーズが繰り返されます。
ピアノはだんだん小さくなり、フェイドアウトになり、丁寧にエンド。
ここはオリジナルと同じでした。
うーん、やっぱり私の中にはまだソロへのこだわりがあるようです。
トリオでの演奏もいい曲であることに間違いありません。
あくまでも私のこだわりとして、です。
「Walk Alone」
この曲もソロアルバムから。
小曽根さんの曲にソルトさんの解釈が加わって、ソルトさんらしいメッセージが感じられる、好きな曲です。
去年のソロでは「ホントにピアノだけ?」と思ってしまうような、いろんな音が自然に構築されるような演奏でした。
それがトリオになると、リズム部門は2人に完全に任せられて、より深いピアノを感じることができました。
心をこめて弾くことに、より集中できている、と言えましょうか。
ピアノの芯がある音、でもやさしい音も混じって。
それに絡みつくように支える、山木さんのブラシがとても心地いい。
強さだけではない熱いピアノと2人のコンビネーションに「すっかりジャズの曲だな」と思いました。
エンディングに向かうフレーズが何度も繰り返されるのも、この曲の魅力。
そのたびに3人の一体感がどんどん増していきます。
ピアノがちょっと変化しても、応えるブラシ。
3人が小さくなって、小さくなって、終わります。
ソロでもトリオでも違和感なく聴き込むことができた曲でした。
ソロのパワーアップしたのがトリオ版、のように。
「Mr.Madonna」
この曲もソロアルバムからですが、去年2月のトリオのライブでも演奏されています。
ソロ用に書いた曲でこんなに3人で盛り上がっていいの?という状態でした。
実はそのときの鮮烈なイメージが邪魔をして、この曲に関しては私はツアー当初は物足りなさを感じていました。
「去年はもっと突き抜けてたぞ!」みたいな。
客席もすごく盛り上がる曲なので、私の中でハードルが上がっていたことは確かですが。
しかし回数を重ねるうちにヒートアップ!
まあ、毎回すごいことになりました。
ライブでは「A Man in Paris」のかっこいい余韻に続いてこの曲でした。
唸る客席にピアノのアップテンポのイントロが飛び込んできます。
「これからは『Mr.Madonna』だよ、この曲だよ、みんな!」と誘っているように。
くすぶり続けるピアノにドラムも乗ってきます。
長く続いたイントロがはじけるようにしてメロディへ。
メロディアスなフレーズ。軽快なテンポ。
小節の最初に出てくる強い音が心地いい。
次第にせり上がってくるようなリズムにウキウキします。
そしてピアノは展開部へ。
少し抑えめでしょうか。音の数も多くありません。
ツアーの初めの方はこのままサビも通り過ぎてスッとベースソロに移っていったときもありましたが、ツアー後半になると高音を織り交ぜた気持ちいいプレイが続いたりして、徐々に盛り上がってきました。
ソルトさんもピアノの前で跳ねています。
スローなフレーズで始まったベースソロもヒートアップしてきます。
歌い出すベース。指がクモのように弦の上を動きます。
チョッパー、それもただのチョッパーでは飽きたらず勢いつけて振りかぶってからチョッパーしたりする日も。
暑くなったのか演奏中に上着を脱いだ日もありました。
井上陽介ワールドを大いに楽しませていただきました!
ピアノで最後のメロディへ。
上り詰めていきます。
高音が連打され、3人の音が強くなって、ソルトさんのからだがくねります。
大盛り上がりになって、エンド。
やはりこの曲が持つパワーは尋常ではありません。
「In A Driving Rain」
私が大好きなアルバム「Eartheory」からはこの曲が選ばれました。
メロディがとてもはっきりしていて、疾走感があります。
3人同時に盛り上がっていくのが感じられ、引き込まれます。
出だしのピアノのメロディを聴いただけで、私はもうワクワク。
そこに入ってくるベースもいい。
3人でピッタリ合ったフレーズ、それがジャーンと破裂します。
破裂後の陽介さんの「合ってよかった~」というような顔が毎回楽しみでした。
そしてピアノがフレーズを少し弾いてから展開へ。
展開前のこの短いフレーズが好きなのです、私。
他の曲でもそうです。ソルトさんのそこのピアノがたまらないんです。
おそらく文面だけでは伝わっていないと思いますが。
展開に入って心地いいピアノは続きます。
たくさんの音が生まれ、高音の割合が増し、ソルトさんらしい音・流れ・フレーズ。
聞こえてくるベースもジャズしています。
熱くなるピアノにドラムも反応。
ピアノに耳を奪われていてもいつの間にかドラムも聴いてるんですよね。
「あ、山木さんもすごい!」とハッとする瞬間、それが嬉しい!
3人の音が融合して作られていくトリオの世界。
盛り上がったところで一緒に歌うピアノとベース。
ドラムが「トントン、トントン」と応えます。
もう一度ピアノとベースが歌ってドラムがまた「トントン」
「ドンドン」のときも「チンチン」のときもありました。
そして急にクールダウンしてベースのソロへ。
この一連も私の好きなところ。
陽介さんのベースは歌っています。
即興のメロディを繰り返したり、オリジナル通りのフレーズに戻ったり、どこかで聴いたことがあるようなないようなフレーズが出てきたり。
ソルトさんも山木さんも毎回すっかり楽しんでいて、音ではやし立てます。
ほっといたらこの3人、いつまでもやってそう。
ベースソロが終わるといつも大きな拍手が起きました。
ピアノがメロディに戻ります。
残念だけど終わりは近い。
3人でフレーズ。ジャーンという破裂。破裂したらソルトさんが跳ねます。
エンディングへ向かって最高潮に。
私のこの場面ではなぜか、大鷲が羽をいっぱいに広げて大空を飛び回っているような、すごく雄大なイメージがいつも浮かびます。
もっと激しいはずなのにね。激しさも感じてるのですが、なぜかこれ。
とっても気持ちがいい。
同時に、あとちょっとで終わってしまう!という残念な気持ちも少し。
ついに最後のフレーズをピアノとベースが歌い、ピアノの高音が響き、ドラムが鳴り響いて、ピアノが引っ張って~~~エンド。
かっこいいし、盛り上がるし、これも塩谷哲トリオには欠かせない曲です。
「Flying Shoes」
アルバム「トリオっ!(3!)」からの曲。
いつ聴いても明るく楽しい気分になれる、ソルト音満載の曲です。
今回のツアーでは1stセットでの演奏でしたが、2ndのアンコールとしても「元気のいい曲をやりましょう!」ということでしばしばフィーチャーされました。
ピアノのメロディが始まります。フライングしてます。
この曲が聞こえるとなにか、安心感のようなものがあります。
完全に3人に身を預けて、どっぶり浸かって聴けると言いましょうか。
この曲でも展開前の短いフレーズが私の楽しみ。
この「Flying Shoes」のそれがいちばん好きかもしれません。
毎回、今日はどんなだったかをメモしてました。
全くオリジナル(CD)の通りというのはほとんどなく(1回あったかな?)CD+流れ気味、CD+やさしい音、テーマっぽいアレンジ、全く違うアレンジ、スタッカート気味に2回x3度跳ねたり、ホントに毎回違いました。
その箇所を聴くと毎回ニヤッと笑ってました。(私が、です)
変なヤツですね。
展開に入るとソルトさんが弾き込みます。
軽やかに流れる指からはたくさんの音が放たれます。
ベースとドラムに乗って、低音から高音まで。
特に高音の割合が多くなると「来てるな!」と感じます。
爆発的にではなくゆっくりと自然に熱くなっていきます。
気がつけばドラムもベースも。
跳ね始めるソルトさん。
この雰囲気に私という存在も溶けてしまいそうな感覚。
そこから落ちてベースソロ。
静かに始まり、やがて歌い出します。
切ない・悲しいまではいきませんが、どこか素朴で心に残る音。
フレーズをピアノがさりげなく後追いします。
山木さんはシンバルでサポート。
暴れたり遊んだりベース自体を叩いたり。
ソルトさんとアイコンタクトして、ピアノに渡します。
陽介さんの「終わった~」という顔。山木さんとも笑い合っています。
最後に向かうメロディ。
繰り返されて3人のテンションは上がっていきます。
とうとう最後のフレーズ。
ブレスであるところでピアノがピーンと鳴ったりしています。
また山木さんの切れ目ないドラムがすごい!
3人同時にエンド!決まりました。
「A Little Lullaby」
盛り上がったステージの最後を締めるバラードの曲。
今回のツアーでは唯一のバラードでした。
陽介さんにもソルトさんにもお子さんが生まれ、その子たちへの子守唄。
東京での楽屋は託児所状態だったそうです。
オリジナルではピアノソロの曲。
同じようにピアノのみで始まり、フレーズの2回目からはベースとブラシがそっと寄り添って、なんだかほっこりします。
ソルトさんにしか出せないやさしい音、やさしいメロディ。
一呼吸あって再びピアノだけでメロディ。
そしてシンバルとベースが小さく入ってフェイドアウト。
やさしい子守唄でステージが終わりました。
最後に
久しぶりのトリオのツアー、十二分に堪能しました。
やっぱり私は塩谷哲トリオがいちばん好きです。
ツアーでなくてもいいので(大阪には来てほしいけど)1年に1度はトリオのライブを聴きたいものです。
3人ともお忙しい方なので調整が難しいとは思いますが。
そして次のアルバムを切に期待しています!
最後までお読みいただき、ありがとうございました。