塩谷哲ピアノ・ソロ・コンサート 2009 in KYOTO

「塩谷哲ピアノ・ソロ・コンサート 2009 in KYOTO」
日時:2009/2/7(土)18:03~20:23
場所:京都府立府民ホール・アルティ

プログラム

1.Morning Bliss / 「Eartheory」
2.Walk Alone / 「solo piano = solo salt」、小曽根真「Walk Alone」
3.Bud Powell / Chick Corea & Friends 「Remembering Bud Powell」
4.Enharmonie / 「Hands of GUIDO」
5.Side By Side(We Go) / 「SALT III」「Live! Live! Live!」「The Selection of SALT」

休憩15分

6.即興演奏「まともに出て来れない人」
7.枯葉
8.組曲「工場長の小さな憂鬱」 / 「solo piano = solo salt」
I 純白の野心
II 森に棲む妖精たちのラベル貼り
IV 慈愛
9.Mr.Madonna / 「solo piano = solo salt」
10.Deep Affection / 「Eartheory」
11.Spanish Waltz / 「Duet with Makoto Ozone」「Eartheory」

アンコール

12.Preciousness / 「solo piano = solo salt」

2009年の初ソルト!京都でのソロでした。

京都のソロは2回目。
前回は07年10月に京都駅近くのアバンティホールという、商業施設の中にあるホールでした。

今回は駅からは離れますが「烏丸今出川」
御所の真ん前、同志社大学のすぐ近くという、また違った京都らしさのある場所。

個人的な話ですが、私は二十数年前にこの辺りに毎日のようにかよっていたことがあり、ライブの前に周りを散策していました。(同大生だったのではありません。悪しからず・・・)
懐かしかったなあ~。でも全く変わっていました。
その中に、微かに記憶にある変わってないところを見つけて「あっ」と思ったり。

ライブが行われたホール「アルティ」の方面には足を伸ばしたことはありませんでした。
(駅から結構歩きました。ちょっとバテバテ。←ウロウロしてるからや!)
昭和63年開館だそうで、当時にはなかったことになります。

ホールに入って一見して「音、良さそう!」と。
ステージは広くてフローリングが綺麗。そこにピアノの存在感。
客席もシンプル。床も木造で、昇降式らしく、座っていると人が歩くたびに少し揺れを感じ、その辺にはホールの歴史を感じました。

開演の場内アナウンスがあると異様に場内は静かに。
ソロではよくあることです。
こんなに静かになったら、かえって出て来にくいのでは?などといつも思います。

ステージには入口のような、それにしては大きいな、というのが3か所ほど。
どこから出てくるのだろう、やっぱりあそこだろうな、と思った左手の大きなドアからソルトさん登場。

1.Morning Bliss

プロローグが静かに流れるように続きます。
どうなるんだろ?或いはこれはこれで完結かな?
「Morning Bliss」っぽいフレーズが出てきて、ここに繋がりました。
今日は何か、ほんわかとしたものを感じます。
輪郭がないというか、寝ぼけてる朝?

やがて強い音が顔をのぞかせ、元気になってきました。
強くなったり、サビはスローになったり、小さい音があったり。

この曲でソルトさんが自由になっていくのがわかるし(こんなレポートには書けないほど)、彼の表現力の深さを表している一曲になっていると思います。

今年も健在だなあ~。(当たり前ですが)

MC(項目のみ書きます)

・第一声「明けまして福は内」
・今年初めてのコンサート。このホールも初めて。
・2時間ほど練習していて、いろんなところから音が響いてきて気持ちよかったです。マイクなし、生の音の素晴らしさ。
・ソロピアノのアルバムを出します。実はこわかったんです。何を演奏していいか。
・ちゃんと楽譜のある曲も書こうと思って(いつもちゃんと演奏してますが)、組曲も作りました。
・今日の1曲目は弾いてるうちに「Morning Bliss」になってしまいました。
・新アルバムは「ソロピアノ、ソロソルト」
 「ソロソルト」って言いにくいでしょ。「ソロソロト・・・」みたいになっちゃって。
 みんなで練習してみよう!(と、会場で「ソロピアノ、ソロソルト」)
 うまいねえ、みんな。
・小曽根さんには大きな影響を受けているので、小曽根さんの曲も1曲入れたかったんです

2.Walk Alone

この小曽根さんの曲、私は初めて聴きました。
原曲の様子を知らない上での感想になりますが。

左手の伴奏の軽快さがまず飛び込んできて、気分が弾みます。
とってもメロディアスで、歌えそう。

高音に上がっていくところがとてもいい!
ソルトさんの味付けも充分に感じられます。

エンディングにかけては熱く、大きく。
左と右の調和も感じて、ソルトさんは足踏みしてリズム。
何度か繰り返しがあった後、突然終わってしまったという印象。

アルバムで早く聴きたい!

3.Bud Powell

ソロ・コンサートではお馴染みの曲。
前曲との続き方が非常に滑らかで、ちょっと感動しました。

展開部は左手の低音が響いて、右手は自由に遊びます。
ソルトっぽさを感じて心地いい。

高くなって、高くなって、高くなって、というところ。
音の多さ、自由さ、飛行しているよう。

MC

・「Walk Alone」は随分昔の曲なんですが、ボッサ風にアレンジしてみました。
 この曲の懐の深さを感じます。
・次はチック・コリアの曲でした。
 弾くたびに「彼は頭がよかったんだろうな」と思います。
・作曲は数学と似ているところがあって、僕もそういうことに興味があります。
 でも音楽はそこに人間的な要素が加わるから面白いんです。
・バルトークという作曲家は「黄金率」を使って作曲してました。
 木の葉の付き方や巻き貝の巻き方は黄金率に従っているらしいです。
・そういう作曲の理論を作れなくて、ボクは大学を中退したんです(笑)
・ピアノには88鍵あって、次にどの鍵盤を弾くかというのは感覚的なものが多いです。
 その人のクセが出ます。でもそれだけでは面白くない。
・小難しい話をしたので、次も小難しい曲を。
 メロディがシンプルに繰り返されていて、ハーモニーがシャープからフラットに、などと移り変わっていく曲です。

4.Enharmonie

私はMCに影響されて?改めてハーモニーに注目して、メモもあまりとらずに聴いていました。
何度も聴いてますが、深い曲です、この曲。

スーッと流して聴いても入ってきて、いい時間が過ぎます。
が、注意深く聴き耳を立てると「こうなってるんじゃないかな?あ、ここは・・・」みたいな、うまく書けませんが、発見と言うと大袈裟ですけど。

この日はクラシカルな要素もあって、強めの主張が印象的でした。

オルゴールのように静かになって、もう一度盛り返すのかなと思いきや、そのまま終了。

5.Side By Side(We Go)

引き続いて抑え気味に入ったこの曲、だんだん元気になってきて、サビのところはもう強く。
展開に入ってソルトワールド全開です。
軽やかに流れて、大きくなってまたサビへ。
クラシックのテイストが入ったりして、楽しんでます、ソルトさん。

すると突然「Keep Smiling!」のメロディへ。
パパーンと高音に駆け上ったり、メロディをモチーフに遊んでみたり。
小さくなってみたり、ブレスを取ってみたり。
好き放題してるなと思ったら、案の定ソルトさんから笑い声が。

次は「♪もう~い~くつ寝ると~」と「お正月」になりました。
客席は笑い、ソルトさんは「早い?」(2月に来年のお正月の歌は早い?という意味でしょう)

そして「Side By Side」に戻り、最後に盛り上がって終了。
(18:56)

休憩15分

教会のチャイムのような合図が鳴ります。

左手のドアが開いたのに、なぜかコツコツと足音が。
客席の後ろからソルトさんが降りてきた音でした。
ウケる会場。
またやってくれました。

MC

・こういうのが好きでね。ドアが開いたのに違う所から出てくるというのが。
・では即興演奏を。タイトルは・・・「まともに出て来れない人」(笑)

6.即興演奏「まともに出て来れない人」

低音でチョコチョコチョコと素早く細かい音が刻まれて、駆けめぐっている人=まともに出て来れない人のイメージが浮かんできて、笑ってしまいました。
テンポがゆっくりになっても、右手がなんか落ち着きません。

そのうち低音がボーンと。
止まったようになってけだるさが漂います。
動きすぎて疲れて休んでるようなイメージ。

また走り出しました。
今度は何か、目的をもって走っているような気がします。
主張を感じます。

走って止まって走って止まって・・・終わってしまいました。

7.枯葉

遊びがひとしきりあって、この曲のメロディーへ。
また季節感ある??曲です。
ソルトさんの頭に何が浮かんだのでしょうか。

左手の低音の和音がずっしりきて、右手はソルトっぽい指さばき。
早くなったり、メロディアスになったり、聴いていて心地よく枯葉が感じられます。
この曲でもクラシカルが入りました。

スローになって、やさしく、小さくなっていき、両手が膝の上に静かに置かれました。

MC

・ソロアルバムで組曲も書きました。
・アルバム発売記念のツアーで全国をまわります。
 大阪は浪切ホール。先ですが7月に兵庫の神戸女学院小ホール。
 神戸女学院以外の人でも入れるんだよね(笑)

 (管理人注:「神戸女学院小ホール」は以前の「兵庫県立芸術文化センター小ホール」のことです。
  命名権、というやつですね。ソルトさんは過去に2度ここでソロをされました。
  もちろん、神戸女学院の関係者以外の人でも入場できます。)

・組曲のタイトルは「工場長の小さな憂鬱」
 今日はこの中から何曲か弾きます。
 全部はしません。もったいつけます(笑)。18分もありますから。
・まず「純白の野心」という曲。
 次に「森に棲む妖精たちのラベル貼り」という曲を。何なんだそれは!と思うでしょ(笑)
・私はご存知のように前世パリジャンですから、そういう曲に憧れがあります。
 何も現代曲が作りたくて大学に入ったんじゃない!みたいな。
 もちろん、いろんな曲をいろんな楽器やアーティストと共演して、それはそれですごく楽しいんですけど。
・この曲はエスプリ、日本で言う「わび・さび」が効いてまして、こういう曲を作りたかったんです。ラベルのような。
 「森に棲む妖精たちのラベル貼り」・・・「もーりーすー、ラベル・・・」
 (客席から)「あ~~~!」
 (ソルト)「あ~~~!って!!」
・「純白の野心」というのは、もう黒鍵なんかいらないよ!という・・・
 黒鍵がなかったらどこを弾いたらいいかわからなくなりますけどね。

8.組曲「工場長の小さな憂鬱」
I 純白の野心
II 森に棲む妖精たちのラベル貼り

小さく始まった音がだんだんだんだん強くなって最高潮まで達します。
ハッキリした音です。
高音を波のように寄せては返します。

さあこれからか、というところでソルトさん笑って終わり。

MC

・次に「慈愛」というのは・・・

IV 慈愛

感じが変わって組曲の一部ではなく、ソルトさんが普段書く曲のようです。
ドラマチックで雄大。

軽快なメロディーに入ったところで終わり。

MC

・とまあ、こんな感じで続いていきます。
・正に今のコウジョウの月・・・・・
・ジャケットの写真も撮り終えまして、ピアノのフタを持ち上げてる写真です。
 6連弾のメンバーから「痩せてるねえ。修正した!?」と言われたんですが、レコーディング中に撮ったもんで、それだけ痩せててやつれてたんです。
 レコーディングって大変なんですよ。
・ビートルズの「Lady Madonna」もときどきライブで弾くんですが、そのような曲も書きました。

9.Mr.Madonna

ホントに「Lady Madonna」の雰囲気です。
軽快!本当にレディっぽい!

左手でドンドン!と鳴るのが印象的。
大人のノリと言いましょうか、スイングしてます。
ソルト音もふんだんに。
メロディアスに音が刻まれていきます。

ソルトさん、最後は立ち上がってからだを鳴ってる鍵盤に押しつけるようにして、音を止めました。

MC

・ソロアルバムにはバッハのメヌエットも入ってます。
 (114番の触りを弾くソルトさん)
 これは長調ですね。短調もあります。
 (115番の触りを弾くソルトさん)
 今日はしません。できません。大変なんです、これ。
・子どもさんの練習のためにバッハが書いた曲なんですけど、どうやらバッハが作ったんじゃないらしいね。
 「Anh」みたいなのが曲番号の頭に付いて、最初「アハーン」かなと思ったんですけど(笑)、それは「バッハが書いたらしいけど、微妙です」のような意味だそうです。
・バッハじゃない、という証明がされたようで・・・
・すごい練習しました。
・他にも「INVENTION」も入ってますし、ジャコ・パストリアスやノラ・ジョーンズの曲も入ってます。
・ぜひお店で手に取って、聴かなくていいから3枚買ってください(笑)・・・そんなことはない、ちゃんと聴いてくださいよ!
・次は違うタイプの曲を。エスプリ、わび・さびの世界です。

10.Deep Affection

静かな導入部に続いて、自然にメロディに入ります。
この曲、トリオバージョンではベースのワンフレーズがあって更に深く入り込んでいきます。
今日はソロですがなぜかベースが鳴っているような・・・(私だけかも)
展開部はゆっくり進みます。
今日も深い。

最後に向けてメロディは強くなったり、ブレスが入ったり、いろんな音が現れたり。
ソロの自由さを感じます。
そして消え入るようにエンディング。
その余韻を楽しんで、客席から拍手が起こりました。

11.Spanish Waltz

低音がくすぶってメロディに入るのを待っています。
この曲も日によって強く入ったり、スーッと入ったり、自由自在。
今日はより重厚な感じです。

左手と右手がくっついたり離れたりしながら、曲を形作っていきます。
突然暴れたりして、気分が高揚します。

かと思うと、階段を下りるように音が小さくなっていき、静かにフェイドアウト。
映画の回想シーンのような、やさしいフレーズに移ります。
いつもここでやられます、私は。
トリオで言うベースとの絡みのところはピアノの素早い高音が鳴ります。

そしてそこからもう一度暴れ出すんですよね、この曲は。
ほとばしるエネルギー。
ソルトさんからうなり声が聞こえます。

クライマックスに達して、エンディング。
いつ聴いてもドラマチックな曲です。

アンコール

すぐ出てきてくれたソルトさん。

MC

・レコーディングは孤独だったので、こうして聴いてくれている人から直接反応してもらって、すごく嬉しいです。
・音楽によっていい影響を受けているし、一人ではできないもの。ソロのレコーディング中にも思いました。
・音楽に対する感謝の気持ちを曲にしました。

12.Preciousness

やさしい音がたくさん詰まった、スローバラードです。
ソルトさんの息づかいが聞こえてきそう。
ブレスに気持ちがこもっていて、たまらなくなりました。

どうしてこんなに伝わる曲が書けるのか、伝わる曲を演奏できるのか・・・

・・・くらいしかレポートできません。すみません。

ソルトさんがステージを去った後も続く拍手。
再登場し深々とお礼
再アンコールはありませんでしたが、中味がぎっしり詰まったソロコンサートでした。

今年は初のソロアルバムの年。
いろんな顔を持つアルバム、ソルト音がたっぷり入っていそうなアルバムだとわかって、今年の活動がもっと楽しみになりました。

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私「ソロアルバム、やっぱり期待を裏切らないですねー!」
ソ「ハハハッ!ありがとう!これから弾いていくうちにどんどんよくなっていくと思うよ。」

(以上、乱筆長文にお付き合いありがとうございました)

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